“誰もみたことのない世界“を目指すとき、「そんなのやめておけ！」と言われるかもしれない。これは愛情からくる言葉かもしれません。

でも、もし自分の望む道があるのなら、「たとえひとりになっても」その道を歩いてもいい。

自分の信じる素敵な世界に向かって進んでいい。

バレエ教師である私は、このメッセージを子どもたちに伝えたいと思い、バレエ「えんとつ町のプペル」の制作をスタートさせました。

子どもたちがこれからの長い人生の中で、自分の星を見つけたとき、うそつき呼ばわりされても、「空気をよめ」と言われても、横やりがとんできても、前を向いて自分の信じる道を歩んでほしい。

夢を追いかけることは簡単ではないかもしれない。たくさんの人の想いを振り切らなきゃいけないかもしれない。ひとりぼっちになるかもしれない。苦しいことも辛いこともあるかもしれない。

それでも、勇気をもって歩き続けたら、その道程で一緒に歩む仲間ができること、最後には満天の星空に出会えること、見たことのない素晴らしい世界が広がっていることを、この作品で伝えたいのです。

子どもたちが自分の道を歩むとき、この作品が心の”おまもり”になるように、それぞれの星空にたどりつけるようにと願いを込めて。

僕の心はいつも物語と共にあって、それを音楽を使って紙芝居のように描きます。

音楽は驚いたり、飛び跳ねたり、怪しんだり、下に潜ったり上に飛んだりして、言葉では足りない景色を描きます。最終的にそれは、踊ってくださる方々の手をもって皆さんのところへ届きます。

一体なぜこんなことをやっているかというと、それはひとえに見てもらった時に「あっ」と思うことを１つでも残せたらと思うからです。

それはもしかしたら日常の些細なことで感じる”心に残ること”と似ているかもしれないし、楽しかった”思い出”のようなものかもしれません。

もしも見終わったあと何年か何十年か経っても、あぁあのシーンを覚えているなぁと思っていただければそれが一番嬉しいです。

音楽を書く人間というのは曲に輝きがあるかどうかはよく見えてしまうもので、一生懸命作ってもどうにも輝いていない音楽では世に出せないと苦しんだりもしますが、このバレエの曲はどの楽曲もキラキラと輝いているものがあるように思います。

それは時差をぬって電話でアイデアを飛ばし合いながら共に制作してくださった製作総指揮の関さん、最後まで命を吹き込んでくださった音楽監修・指揮の冨田さん、編曲の中原さん、日下部さん、ロイヤルチェンバーオーケストラの皆様の情熱の賜物だと思います。

皆さんの心に残るものの１つになれたらいいなと思います。